多くの恋愛関係・夫婦関係では、相手に矛盾した感情を持ってしまう。
相手に救われているように一方で感じながら、もう一方ではその同じ相手に傷つけられているように感じる。
この相手は自分がとっても欲しいものを持っている人でありながら、同時に自分をもっとも困らせる人でもある。
「いちばん大好きな食べ物に毒が盛られている」ようなイメージです。
食べたくて食べたくてしょうがないけれど、食べれば病気になってしまう。
もしあなたがこのような恋愛関係・夫婦関係を味わっているとしたら、あなたには「抑圧と投影」があります。
「抑圧」とは、自分の中にありながら認めていないこと。「投影」とは、それを相手の中に見ているということ。
(注:ここでは「無意識にあって自覚できないこと」をまとめて「抑圧」と表現しています。実際には「抑圧」以外の様々な心理作用によって自覚できないのですが、代表選手のような形でこの用語を使っていることをご了承ください。)
つまり、恋人や伴侶の中に「未解決の自分」を見て、未解決の苦しみを自分で解く代わりに、その能力も責任も相手にあるように感じてしまっているわけです。
「抑圧」があり、自分を悩ませているものが自分の中にあるということに気づけていません。自分自身の問題に無意識なのです。
そして「投影」があり、相手によって自分が苦しめられているように感じてしまいます。
自分を満たしてくれるべきは相手であると考える。これが「依存」です。
そして、相手が当然してくれるべきことをしてくれないので憤慨する。これが「敵意」です。
パートナーに矛盾した感情を持ってしまうのは、「抑圧と投影」から「依存と敵意」が生じているからなのです。
自分の心理的問題に向き合って、自分の責任において解いていくことで、情緒的成熟が起こります。
自分が向き合っていない心理的問題が多ければ多いほど、そして深ければ深いほど、パートナー関係は「依存と敵意」に満ちたものになります。
「依存と敵意」はとても苦しいものです。苦しみから自由になりたいのに、解決の鍵を握っている相手はちっとも応えてくれない。そういった無力とフラストレーションから自分を救い出してあげるには、解決の鍵を自分自身で握ることです。
「依存と敵意」を解くには、「抑圧と投影」を解けばいい。
具体的には、相手に対して感じていることを、自分の中に原因があるものとして扱うということです。
つまり、相手に対する自分の反応を起こさせているのは相手だという見方が根本的にあるあいだは、精神的自立はできません。「なぜ私はこんな風に反応するのだろう?」と問うて、自分を深く知る方向に進むと、これまで見えていなかった自分が見えてきます。
「無意識に追いやられていた自分に気づく」ということが「抑圧を解く」ということです。
そして、これまで認めることができなかった自分の感情や欲求や信念や衝動を「自分のもの」として認識できるようになるにつれて、「自分に属するものを相手に属するものであるかのように見る」という投影も止みます。
こうやって、「自分をよく知ること」と「心理的問題を解く責任を自分で負うこと」を通して、精神的自立へ向かいます。そして、精神的自立に根ざした恋愛関係・夫婦関係では、「抑圧と投影」が少ないので、「依存と敵意」に悩まされることも少ないのです。
さて、ここまでは基本的な理論を説明してきました。
ここからは、恋愛関係・夫婦関係でよく起こる2つのパターンについて具体的に見ていきましょう。
1つ目は「自分にはパワーがないので、相手のパワーによって守ってもらわねばならない」というパターン。2つ目は「自分には自己肯定力がないので、相手に認められ承認されることでしか自己価値を感じられない」というパターンです。
①「自分の中にあるパワーを掌握していない」という問題
自分が必要としているものは自分から求めていく。自分に害となるものから自分自身を守る。そういう根本的なパワーが誰にでも備わっています。
ところが、様々な理由から、自分から必要なものを求められない、自分の力では有害なものから自分を守れないという感じ方をしている人がいます。なぜ自分自身を無力な存在だと感じるかと言うと、自分のパワーを掌握していないからです。自分自身のパワーと繋がっていないのです。
自分のパワーを所有しておらず無力で弱い存在だと自分のことを感じていれば、パワフルで強いパートナーに惹かれます。「この人に守ってもらいたい」と思うのです。
「強い相手」に惹かれ、相手のパワーによって守られていると感じるときには、満ち足ります。けれども、往々にして、その同じパワーによって悩まされるときもあるのです。
自分がパワーを持っていなければ、相手のパワーによって助けられたり苦しめられたりと二面的な体験をしてしまうのです。
これが「依存と敵意」の構造です。
自分で自分を守ることをせず、常に相手に守られようとしてしまうと、守ってもらえる満足とともに同じパワーによって傷つくという体験を避けることができません。
そのことで相手を責めてもしかたがない。
自分が傷ついてしまうのは、相手が自分を守ってくれないからではなく、自分が自分を守っていないからなのです。
なぜ自分は自分を無力だと感じてしまうのだろうか? なぜ自分で自分を守れるような気がしないのだろうか?
このように自問して、自分と自分のパワーとのアンビバレントな関係に気づくことが大事です。
自分の中に、自分のパワーを掌握することに対する抵抗があり、パワーを背負いたくないという思いがあるはずです。
その心理的問題を解ければ、パワーが戻ってきます。
②「自分で自分の価値を認められない」という問題
精神的自立の過程では、「他者承認」から「自己承認」へとシフトします。
幼いときには、親など周囲の人に「価値ある存在」として認められなければ自信をもてない。それが心理的に成熟していくにつれて、自分で自分を「価値ある存在」として承認できるようになる。
自己肯定力というものを自分で発揮していくわけです。
「他者承認」のステージにいる人が恋愛や結婚をすると、自分の価値はパートナーが決めてくれると期待します。
自己肯定力を自分で掌握せずに、パートナーが持っているものとして認識すると、パートナーに認められたときにはものすごく嬉しいという体験をすると同時に、認めてもらえないときには許せない気持ちになります。
「認めて欲しい欲しい」という依存とともに、「なんで認めてくれないんだよ」という敵意がセットで生じてくるのです。
別の言い方をしますと、自分を愛するということができていない人が恋愛や結婚をすると、相手に愛されることを強烈に求めるとともに、愛されないことに敵意を持ってしまいます。
「自分が愛される」ということについてのアンビバレンスが自分で解消できません。
自分を愛することができている人は、愛してもらえることに依存せず、愛されることを楽しめます。もし愛が得られなくても、それは脅威となりません。なぜなら、すでに自分によって自分が愛されているからです。
自分を愛しない相手を受け止めることができます。
けれども、自分を愛していない人は、相手に愛されることに依存するため、愛されないことを恐怖します。自分が愛を感じられるか感じられないかの采配を相手が握っているとなれば、そういう強大な相手を恐怖せざるを得ません。
意識の根底では相手を怖れています。
そして、怖れている相手を愛することはできません。
愛されよう愛されようと相手に執着する人は、相手を怖れているのであり、相手を愛せません。
ですから、愛されない苦しみで悩む人は、「自分を愛する能力」に目覚めなくてはならない。
そのためには、「自分を愛する能力」をなぜ自分が掌握しようとしないのかに気づく必要があります。
なぜ自分を嫌うのか、なぜ自分を否定するのか、なぜ自分を大事にしないのか、こういった自分の心理的課題に向き合って、自分をもっと深く知っていく必要があるのです。
こういった問題が解けるにつれて、「自分を愛する能力」が発揮されて、自分であることが心地よい、自分であることが好きだ、自分は自分でいいのだという感覚が優勢になっていきます。
そして、自己肯定が自分の中でできるようになるにつれて、相手を怖れずに愛することもまたできるようになるのです。
相手に救われているように一方で感じながら、もう一方ではその同じ相手に傷つけられているように感じる。
この相手は自分がとっても欲しいものを持っている人でありながら、同時に自分をもっとも困らせる人でもある。
「いちばん大好きな食べ物に毒が盛られている」ようなイメージです。
食べたくて食べたくてしょうがないけれど、食べれば病気になってしまう。
もしあなたがこのような恋愛関係・夫婦関係を味わっているとしたら、あなたには「抑圧と投影」があります。
「抑圧」とは、自分の中にありながら認めていないこと。「投影」とは、それを相手の中に見ているということ。
(注:ここでは「無意識にあって自覚できないこと」をまとめて「抑圧」と表現しています。実際には「抑圧」以外の様々な心理作用によって自覚できないのですが、代表選手のような形でこの用語を使っていることをご了承ください。)
つまり、恋人や伴侶の中に「未解決の自分」を見て、未解決の苦しみを自分で解く代わりに、その能力も責任も相手にあるように感じてしまっているわけです。
「抑圧」があり、自分を悩ませているものが自分の中にあるということに気づけていません。自分自身の問題に無意識なのです。
そして「投影」があり、相手によって自分が苦しめられているように感じてしまいます。
自分を満たしてくれるべきは相手であると考える。これが「依存」です。
そして、相手が当然してくれるべきことをしてくれないので憤慨する。これが「敵意」です。
パートナーに矛盾した感情を持ってしまうのは、「抑圧と投影」から「依存と敵意」が生じているからなのです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
自分の心理的問題に向き合って、自分の責任において解いていくことで、情緒的成熟が起こります。
自分が向き合っていない心理的問題が多ければ多いほど、そして深ければ深いほど、パートナー関係は「依存と敵意」に満ちたものになります。
「依存と敵意」はとても苦しいものです。苦しみから自由になりたいのに、解決の鍵を握っている相手はちっとも応えてくれない。そういった無力とフラストレーションから自分を救い出してあげるには、解決の鍵を自分自身で握ることです。
「依存と敵意」を解くには、「抑圧と投影」を解けばいい。
具体的には、相手に対して感じていることを、自分の中に原因があるものとして扱うということです。
つまり、相手に対する自分の反応を起こさせているのは相手だという見方が根本的にあるあいだは、精神的自立はできません。「なぜ私はこんな風に反応するのだろう?」と問うて、自分を深く知る方向に進むと、これまで見えていなかった自分が見えてきます。
「無意識に追いやられていた自分に気づく」ということが「抑圧を解く」ということです。
そして、これまで認めることができなかった自分の感情や欲求や信念や衝動を「自分のもの」として認識できるようになるにつれて、「自分に属するものを相手に属するものであるかのように見る」という投影も止みます。
こうやって、「自分をよく知ること」と「心理的問題を解く責任を自分で負うこと」を通して、精神的自立へ向かいます。そして、精神的自立に根ざした恋愛関係・夫婦関係では、「抑圧と投影」が少ないので、「依存と敵意」に悩まされることも少ないのです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、ここまでは基本的な理論を説明してきました。
ここからは、恋愛関係・夫婦関係でよく起こる2つのパターンについて具体的に見ていきましょう。
1つ目は「自分にはパワーがないので、相手のパワーによって守ってもらわねばならない」というパターン。2つ目は「自分には自己肯定力がないので、相手に認められ承認されることでしか自己価値を感じられない」というパターンです。
①「自分の中にあるパワーを掌握していない」という問題
自分が必要としているものは自分から求めていく。自分に害となるものから自分自身を守る。そういう根本的なパワーが誰にでも備わっています。
ところが、様々な理由から、自分から必要なものを求められない、自分の力では有害なものから自分を守れないという感じ方をしている人がいます。なぜ自分自身を無力な存在だと感じるかと言うと、自分のパワーを掌握していないからです。自分自身のパワーと繋がっていないのです。
自分のパワーを所有しておらず無力で弱い存在だと自分のことを感じていれば、パワフルで強いパートナーに惹かれます。「この人に守ってもらいたい」と思うのです。
「強い相手」に惹かれ、相手のパワーによって守られていると感じるときには、満ち足ります。けれども、往々にして、その同じパワーによって悩まされるときもあるのです。
自分がパワーを持っていなければ、相手のパワーによって助けられたり苦しめられたりと二面的な体験をしてしまうのです。
これが「依存と敵意」の構造です。
自分で自分を守ることをせず、常に相手に守られようとしてしまうと、守ってもらえる満足とともに同じパワーによって傷つくという体験を避けることができません。
そのことで相手を責めてもしかたがない。
自分が傷ついてしまうのは、相手が自分を守ってくれないからではなく、自分が自分を守っていないからなのです。
なぜ自分は自分を無力だと感じてしまうのだろうか? なぜ自分で自分を守れるような気がしないのだろうか?
このように自問して、自分と自分のパワーとのアンビバレントな関係に気づくことが大事です。
自分の中に、自分のパワーを掌握することに対する抵抗があり、パワーを背負いたくないという思いがあるはずです。
その心理的問題を解ければ、パワーが戻ってきます。
②「自分で自分の価値を認められない」という問題
精神的自立の過程では、「他者承認」から「自己承認」へとシフトします。
幼いときには、親など周囲の人に「価値ある存在」として認められなければ自信をもてない。それが心理的に成熟していくにつれて、自分で自分を「価値ある存在」として承認できるようになる。
自己肯定力というものを自分で発揮していくわけです。
「他者承認」のステージにいる人が恋愛や結婚をすると、自分の価値はパートナーが決めてくれると期待します。
自己肯定力を自分で掌握せずに、パートナーが持っているものとして認識すると、パートナーに認められたときにはものすごく嬉しいという体験をすると同時に、認めてもらえないときには許せない気持ちになります。
「認めて欲しい欲しい」という依存とともに、「なんで認めてくれないんだよ」という敵意がセットで生じてくるのです。
別の言い方をしますと、自分を愛するということができていない人が恋愛や結婚をすると、相手に愛されることを強烈に求めるとともに、愛されないことに敵意を持ってしまいます。
「自分が愛される」ということについてのアンビバレンスが自分で解消できません。
自分を愛することができている人は、愛してもらえることに依存せず、愛されることを楽しめます。もし愛が得られなくても、それは脅威となりません。なぜなら、すでに自分によって自分が愛されているからです。
自分を愛しない相手を受け止めることができます。
けれども、自分を愛していない人は、相手に愛されることに依存するため、愛されないことを恐怖します。自分が愛を感じられるか感じられないかの采配を相手が握っているとなれば、そういう強大な相手を恐怖せざるを得ません。
意識の根底では相手を怖れています。
そして、怖れている相手を愛することはできません。
愛されよう愛されようと相手に執着する人は、相手を怖れているのであり、相手を愛せません。
ですから、愛されない苦しみで悩む人は、「自分を愛する能力」に目覚めなくてはならない。
そのためには、「自分を愛する能力」をなぜ自分が掌握しようとしないのかに気づく必要があります。
なぜ自分を嫌うのか、なぜ自分を否定するのか、なぜ自分を大事にしないのか、こういった自分の心理的課題に向き合って、自分をもっと深く知っていく必要があるのです。
こういった問題が解けるにつれて、「自分を愛する能力」が発揮されて、自分であることが心地よい、自分であることが好きだ、自分は自分でいいのだという感覚が優勢になっていきます。
そして、自己肯定が自分の中でできるようになるにつれて、相手を怖れずに愛することもまたできるようになるのです。
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